Security

Threat Landscape 2026 世界の脅威レポートの数字をどう読むか

CrowdStrike 2026 グローバル脅威レポートの八つの数字と、それぞれがどう測られたのか——それが、どこまで一般化できるかを決めます。

00

数字より先に、読み方

見る値打ちはありますが、これは全数調査ではありません。脅威レポートのデータは、ベンダー自身の製品テレメトリとインシデント対応の案件から来ます。母集団はその顧客環境——EDR(エンドポイントの検知と対応)を導入している、たいていは予算のある組織です。

数字が捏造だという話ではありません。どの数字にも三つの限界がついて回るという話です。どんな環境で測ったか、何で測ったか、その道具に何が見えているか。この三つを飛ばすと、「EDR のある環境で見えた姿」を「世界の姿」だと思い込むことになります。

使うときの目安

この種のレポートは攻撃手法と傾向の情報として使ってください。実際に対応した案件から来ている、いちばん確かな部分です。避けたいのはその割合を自分の組織のリスク確率の土台にすることです。それには自分の環境のデータが要ります。

01

八つの数字

以下の数字はすべて CrowdStrike 2026 グローバル脅威レポートの公開ページから。対象は 2025 年の観測データです。

02

速さ:27 秒と +65%

この数字は何か

Breakout time最初に入られた一台から、環境内の別の一台へ横に移るまでの時間です。測っているのは守る側の時間の予算——攻撃が広がる前に、検知・判断・封じ込めをすべて終える必要があります。記録された最短は 27 秒、平均の速さは前年比 65% 増でした。

どう読むか

27 秒は最短値であって平均ではありません。平均だと思うと状況をひどく読み違えます。多くの攻撃はここまで速くありません。ただ正直な使い方が一つあります。最悪の場合に残された時間を示していることです。人がまず目を通さないと動き出さない手順は、この桁では間に合いません。

「+65%」のほうが「27 秒」よりずっと使えます。同じ測り方で二つの年を比べたものだからです——同じ物差しで二度測れば、物差し自体のずれは打ち消されます。ベンダーのレポートで最も見る値打ちがあるのはこの種の数字です。前年比は絶対値より信用できます。

03

ファイルを置かない攻撃:82%

この数字は何か

2025 年の検知の 82% が malware-free——攻撃の過程で悪意あるファイルを落とさず、OS 標準のツール、正規のソフト、盗んだ認証情報を使うものでした。

どう読むか

これはレポート全体で最も慎重に扱うべき数字です。二つのことを同時に映しているからです。

  1. 01攻撃者のふるまいが実際に変わっていること。これには独立した証拠が数多くあります。
  2. 02そして、検知する力そのもの。「ファイルのない攻撃が見える」ことは、まさに EDR 製品の売りです。ふるまいが見えずファイルしか見えない道具なら、malware-free の割合はゼロになります。攻撃がないからではなく、見えていないからです。

ですからこの割合が確かに描いているのはしているのは「EDR のある環境で何が見えるか」であって、世界全体の攻撃の内訳にそのまま広げることはできません。

ただし、実務の結論は変わりません

本当の割合が 82% でも別の数字でも、向きははっきりしています。ファイルの特徴を中心に据えたウイルス対策では、検知の大半をつかまえられません。この結論は、あの割合が正確でなくても成り立ちます。

04

AI を使う攻撃:+89%、90 以上、+550%

この数字は何か

AI を使う攻撃者による攻撃が 89% 増加。90 を超える組織で正規の AI ツールが不正な指示の生成に悪用されました。ChatGPT が犯罪フォーラムで言及された回数は、ほかのどのモデルより 550% 多いという結果です。

どう読むか

「AI を使った」という区分の線引きはベンダーが決めています。レポート間で比べられません。ですから「+89%」は同じレポート内部の傾向として読み、他社の数字と並べないでください。

「+550%」が測っているのはフォーラムでの言及回数です。話題の多さの代理指標であって、実際に攻撃へ使われた回数ではありません。ChatGPT が最も多いのは、それがいちばん普及していることの反映でもあります。

「90 を超える組織で正規の AI ツールが悪用された」が、この三つで最も確かです——数えられる事象であって、割合でも、定義しないと判定できない分類でもありません。そしてこれが指しているのは、このサイトの別のページで扱っていることです。問題はモデルそのものではなく、誰が何を食べさせられるか、そしてそれに何を許しているか

関連自社で動かす LLM アプリをどう守るかはOWASP LLM Top 10を。とくにプロンプトインジェクションと、権限を渡しすぎる話の二つ。

05

国家が背後にいる相手:40% と +266%

この数字は何か

中国系の攻撃者が突いた脆弱性の 40% がエッジ機器を狙ったもの。国家が背後にいる相手によるクラウド経由の侵入は 266% 増えました。名指しされている相手には OPERATOR PANDA(中国)、FAMOUS CHOLLIMA(北朝鮮)、PUNK SPIDER(eCrime)が含まれます。

どう読むか

特定の国に結びつける判断はベンダー自身の情報分析の手法に依っており、その手法は全部が公開されているわけではありません。脅威情報の分野では普通のことで欠陥ではありませんが、この種の分類は外部から独立に検証できないということです。

台湾の組織にとっては、「40% がエッジ機器」のほうが、誰の仕業かよりずっと重要です。エッジ機器——VPN のゲートウェイ、ファイアウォール、ルータ、NAS——はたいていエンドポイント保護の外にあり、更新の間隔が長く、破られればそのままネットワークの内側に立たれます。「誰の仕業か」とは無関係に、いますぐ棚卸しに使える方向です。

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守る側にとって何を意味するか

上の限界をすべて差し引いても、残る方向はそのまま成り立ちます。どれも、特定の割合が正確であることに依存していないからです。

  1. 01対応の速さは設計の問題であって、人手の問題ではありません。人がまず目を通さないと動かない手順は、秒単位の横移動に追いつきません。
  2. 02主戦場は身元と認証情報です。攻撃者がファイルを落とさなくなるほど、正規に見えるログインへの依存が強まります。
  3. 03エッジ機器を棚卸しに入れること。どの資産台帳にも載っていないことが多く、それこそが狙われる理由です。
  4. 04自分で入れた AI ツールが新しい攻撃面です。レポートの「正規の AI ツールが悪用された」90 余りの組織が使っていたのは、自分たちで買ったものです。

この四つは、どれも数字が正確であることを必要としません。割合が正確かどうかでレポートの値打ちが決まるなら、そのレポートはたいてい判断には使えません。

出典と限界

この数字はどこから来たか

すべてCrowdStrike 2026 Global Threat Reportの公開ページから。確認日 2026-08-06。対象は 2025 年の観測データで、著作権は CrowdStrike にあります。

このページは公開された要点をまとめ、読み方を添えたものであり、レポートの内容を複製するものではありません。データと研究成果は TauX のものではありません。方法論、図表、相手の分析を見るには原典をお読みください。

このページの解釈、訳語、守る側への提案は TauX が書いたもので、CrowdStrike の立場を示すものではありません。レポートのデータ源の限界を指摘することは、その誠実さを疑うことではありません。テレメトリを扱うときにいつもすべきことであり、それは私たち自身が出す数字にも当てはまります。

この傾向が自分の環境に何を意味するのか

レポートが語るのは世界の姿です。要るのは自分の資産台帳と、露出している面。そこは棚卸しから始まります。